LGBT 女装フラット化

ある中国人トランスジェンダー「中国はマジでTGに厳しい。日本に来てよかった」

「中国はマジでTGに厳しい。日本に来てよかった」

さすがに近年の中国では「生殖」のコントロールという思想はやや弱まったが、社会的に理解が深まっているわけでもない。中国人は家族・一族の付き合いが濃厚なので、LGBTの人にとってはやはり生きづらい社会だろうと思われる。
トランスジェンダーの場合は、声や外見的特徴から比較的わかりやすい人もいるはずにもかかわらず、北京や上海のような大都市でもほぼ姿を見かけない。
そんななか、半年ほど前、ツイッターで在日中国人のトランスジェンダーをたまたま見つけた。中国黒龍江省出身で来日5年目の彼女、サクラさん(仮名27歳、性自認は女性)は、西日本の某都市に留学中、とのことだった。

――まず、女性として暮らしはじめたきっかけを教えてください。
実際に女性の服を着たのは日本に来て3年目、25歳のときです。ずっとやってみたかったことなので「ようやくできた」という気持ちでしたね。服は通販で買いました。
――なるほど。上手にできるものなんですか?
徐々に慣れた感じですね。メイクの方法はYoutubeで動画を見て自分で勉強しました。最初は家のなかで着てみて、それから外に出てみて、という感じで。
日常生活をぜんぶ女性として過ごすようになって、学校にも女性の格好で通学するようになったのは、1年くらい経ってからです。いまは、日本人の女友達に私がメイクを教える側ですよ(笑)。
――逆に、中国にいたときは男性の格好だったと。中国の小中学校の制服は男女ともに共通のジャージなので、性別の違和感に悩む人には助かる部分もあるんでしょうか。
うーん、そうかもしれないですね(笑)。ちなみに私、最初は自分をゲイだと思っていたんですけど、途中から違うと気づいて。
自分が好きになる男性は「ゲイの男性」じゃなくて、あくまでも異性愛者の男性なんですよ。それに、ゲイの男性が私を好きになるのは「男性としての私」を好きになっているわけだから、それは違うなって。
――そうなるわけなんですね。さておき、ということはサクラさんは中国にいた時期に「彼氏」がいたことはあるわけですか。
はい。中学生のときに、別のクラスの友達とお互いに(当時はゲイとして)カミングアウトしたことがあります。彼とは付き合わなかったんですが、中学生のときに彼氏はいました。こっそり付き合っていたんですけど。

――大陸の中国語って、この件に限らずマイノリティに対する表現が厳しめですよね。例えば障害者も、現在は「残疾人」という穏健な表現になりましたが、一昔前は「残廃人」というミもフタもない単語でしたし。さておき、「変性人」や「人妖」はダメだとして、当事者にとって肯定的な響きがある表現ってあります?
「偽娘(ウェイニャン)」かな。これは日本語だと「男の娘」にあたる言葉なんですが、当事者に対してフレンドリーな表現として使われますし、私自身もそう言われればうれしい。あと、日本のLGBTカルチャーからそのまま輸入された「女装子(ニュイヂュアンヅ)」という単語があって、これもアリです。
――まさか「女装子」という日本語がまるごと中国語化していたとは。いっぽうで同性愛者の場合はどうでしょうか。辞書的には「同性恋(トンシンリエン)」という単語がありますが。
表現としては正式ですけど、「変性人」と同じく、はっきり言い切りすぎていてイヤな感じです。ちょっと差別的な使われ方もしますし。
――「同志(トンヂー)」という表現も有名ですよね。もともとは共産党員がお互いを呼ぶときに使う呼称だったのが、香港あたりで同性愛者を指す隠語として使われるようになって、現在はむしろそっちの意味のほうがメインで使われているという。
ありますねえ。当事者に対しても優しい表現ですけど、いまはもう古いというか、ダサい表現です。ネットでよく使われるのは「基佬(ジーラオ)」とか「基友(ジーヨウ)」とか。特に基友はあまり差別感がなくて、フレンドリーな表現です。

――中国の親世代は子どもに対して「結婚しろ」「子どもを産め」というプレッシャーが日本よりもかなり強い印象です。事実、既存の報道などを見ると、LGBTの中国人は親との関係に悩む例が多いみたいですが。
うちの場合は、私が(中国国内で)大学に入ってから自分で「ゲイだ」と伝えました。言ったほうがいいと思ったので。両親の反応は「いつかは“普通”に戻る」というものでしたが……。
――なるほど。じゃあ、女性になってからは?
言ってないです。両親にも会っていないし、(姿が見えてしまうので)スマホを使ったテレビ電話のチャットもしていません。最近だと2018年の旧正月に実家に戻ったんですが、このときは男性の格好に戻しました。私の髪、実はウィッグなんです。

――中国の親世代の人たちだと、ヘタをするとトランスジェンダーの概念それ自体が理解できない可能性がありますよね。中国では、大都市部の北京や上海でもほぼ見かけないですし、ましてや中国最北端の黒竜江省でしょう? こう言うのは恐縮ですが、一般論として、人々の意識があまり都市的に洗練されているとは言い難い地域です。
ですね……。私自身、中国国内でトランスジェンダーの人は見たことがないんです。QQ(チャットソフト)のコミュニティは存在するみたいですが、売買春系の広告の投稿がすごく多くて、そういうのは嫌なのであんまり見ていません。普通のトランスジェンダーの当事者が交流する場は、中国ではほとんどないと思います。

――私も一般的な中国人社会では可視化されにくいマイノリティを探すのによくQQを使うのですが、確かに広告投稿が異常なほど多いですね。ちなみに技能実習生や深圳のネトゲ廃人(拙著『さいはての中国』参照)のコミュは、怪しげなカネ稼ぎや偽造身分証の販売関連の話がめっちゃ多い(笑)。それが、トランスジェンダーのコミュは性的な誘惑になると。
ええ。すごく嫌なんですよ。もっとも、こういう問題は日本でツイッターなんかのSNSをやっていてもあります。「写真送って」みたいなのです。でも、私たちは自分が好きな格好をしているだけで、別に性的にアクティブなわけじゃないんですけど。これってすごく大きな問題だと感じるんですよ。

――そりゃそうですね。
将来の話になりますが、私は希望としては女性の格好で普通に働きたいんです。水商売系ではなく、普通の仕事を。できたら日本で働きたいところですが……。
――中国だと、やはりそれは難しいということでしょうか?
正直、現地で「女性」として暮らした経験がないので、それはよくわからないんですよね。ただ、中国でも日常生活は意外と問題ないのかもしれません。この前、帰省と別の理由で中国に帰ることがあったんですが、そのときにずっと女性の格好で通してみたんですよ。で、スーパーやショッピングモールで買い物をしていると、意外とみんな気付かないみたいで(笑)。「あれ、私ってもしかしたら中国でも大丈夫なのかも?」と思いました。

台湾・香港と比べると……
無関心で、他者と違う存在も放っておいてくれる。かといって社会のなかで互いの多様性を積極的に認め合う習慣もあまり根付いていない。
中国で性的なマイノリティの人が「暮らしやすい」か「暮らしにくい」かは一長一短の部分もありそうなのだが、少なくともベストな環境ではないことは確かだろう。

ちなみに同じ中華圏では、同性婚の合法化をめぐる議論が活発(ただし昨年11月の国民投票で反対意見が上回った)で、閣僚に30代のトランスジェンダー・唐鳳氏を登用している台湾はもちろん、香港もLGBTに対しては比較的寛容なカルチャーの地域だ。
中国本土のLGBTの当事者たちのなかには、境界のすぐ向こうに自由の地が広がっていることに、はがゆい思いを抱いている人もいるかもしれない。

海外の話題

クリハラチアキ
日本って本当恵まれてるよね。
感謝しなきゃね。

あと「女装子」って中国でもそんな表記する場合があるのに驚いた。



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