トランスジェンダー コロナの影響 治療や手術中止、調査で判明
新型コロナウイルスの影響で、心と体の性が一致しないトランスジェンダーの当事者たちが、治療や手術の中止など心身に影響が出かねない状況に置かれたとする調査結果を、当事者グループ「TRanS(トランス)」(東京)の代表浅沼智也さん(31)=総社市出身=らがまとめた。非常時に見過ごされがちな社会的マイノリティー(少数派)の権利擁護が課題となっている。
浅沼さんは名古屋市立大の研究者らと協力して5月、新型コロナで治療などに影響が出ているかどうかを尋ねるアンケートをウェブ上で実施。全国にいる当事者に呼び掛け、119人から回答があった。
回答は自由記述で、浅沼さんらが内容別(重複あり)にまとめたところ、21人が「受診・治療がストップした」とした。ほかに、「個人輸入のホルモン剤が届かない(配達の遅れを含む)」(16人)、「通っていた診療所が一時閉鎖するなど、医療機関へのアクセスが悪化した」「受診先の変更を余儀なくされた(結果的に受診が困難になったケースを含む)」(どちらも14人)などがあった。
医療機関でカウンセリングなどの精神療法やホルモン療法、性別適合手術を段階的に行う当事者は多い。特にホルモン療法は、手術の前後に心身を安定させるために必要となり、「投与中止の苦痛は大きい」と浅沼さん。
療法を受けられなくなった理由として「診療所の一時閉鎖」のほかに、「外出自粛で通えなくなった」「休業で収入の確保が難しくなった」などを挙げる回答も見られた。
「予定していた手術が中止になった」(4人)と答えた人も。性同一性障害特例法では、戸籍の性別変更に性別適合手術を受けることが条件の一つとなっている。浅沼さんは「手術が中止されると、人生設計に影響が出かねない」と指摘する。
新型コロナに感染した際、性自認を本人の了解なく第三者に暴露する「アウティング」に遭う不安があると答えた人(4人)もいた。感染時の報道発表などで、自身の意に反した性別を周囲に知られる可能性を心配していた。
おかしいと思いながら、冷静に社会を歩くのが吉。