性別確認で胸触る メディアの人権意識に波紋 検証・読売テレビ
読売テレビ(大阪市)の報道情報番組「かんさい情報ネットten.」内の企画コーナーで、一般人の性別を確認する場面が放送された問題が波紋を広げている。同社は「プライバシー、人権への配慮を著しく欠いた不適切な取材・放送」だったとして謝罪。当面の間、同コーナーの休止を決め、再発防止のための検討チームを発足させた。性的少数者をはじめとするメディアの人権意識全般が注目されており、専門家らは「これを機にメディア各社が改めて人権について向き合うべきだ」と指摘する。(木村郁子、藤井沙織)
問題となったのは、今月10日放送の同番組内の企画コーナー「迷ってナンボ!」。お笑い芸人が街に出て人々の疑問を調べる企画で、大阪市内の飲食店員の「性別が分からない常連客がいる」との声を取り上げた。
ロケは4月16日、大阪市淀川区の阪急十三駅周辺で実施。常連客に性別を質問したほか、体に触ったり、保険証の性別欄を確認したりした。VTR終了後、番組コメンテーターで作家の若一光司さんが「許しがたい人権感覚の欠如」と批判し、インターネット上でも性的少数者に対する配慮が欠けているなどの声が相次いだ。
同社によると、放送までに2回、担当プロデューサーがVTRの確認に立ち会った。常連客に放送の承諾を得ていることなどは確認されたものの、取材方法や人権上の問題点などについての議論はなかったという。
同番組は、ニュースと街ネタなどの内容を併せ持つ。同志社女子大の影山貴彦教授(メディアエンターテインメント論)は「ニュースの合間にやわらかいコーナーを盛り込むことは良いことだと思うが、バラエティー色が強くなる傾向がある」とした上で、「報道だから、バラエティーだから、といった区分けにかかわらず、放送するにふさわしい内容かどうかが重要」と指摘する。
「人権基準は時代を生きる人々の意識がつくるものであり、法律などの社会システムとともに変わる。メディアはその最先端にいなければならない」
近畿大人権問題研究所の北口末広教授は、そう主張する。例えば、昭和61年施行の「男女雇用機会均等法」で、女性差別への意識は高まり、「セクハラ」という言葉も生まれた。
性的少数者についても、「LGBT」という言葉が浸透して理解が広がり、テレビドラマなどでも「周囲に当たり前にいる存在」として登場するように。平成16年には、日本民間放送連盟も放送基準を改正。「性的少数者を取り上げる場合は、その人権に十分配慮する」と盛り込んでいる。
だが29年、フジテレビがバラエティー番組で性的少数者を題材にしたキャラクターを登場させて批判の声が相次いだ。約30年前に人気を博したキャラクターの再登場だった。同社は放送翌日に謝罪。LGBTの団体などと意見交換し、番組の公式ホームページで謝罪文を掲載。再発防止に向けて、性的少数者に関する研修などを実施している。
今月22日には朝日新聞がツイッターで、同社の運営する書籍の情報サイトで紹介している男性間の恋愛を描いた作品について、「禁断のボーイズラブの世界」と投稿。「固く禁じる」という意味の「禁断」の表現に疑問や批判の声があがり、翌日に「不適切でした」「皆さんのお気持ちを傷つけたことをおわびします」と投稿した。
性的少数者だけでなく、人権意識にかかわる問題は根深い。TBSは29年、情報番組の企画で、犬を多頭飼いするホームレスの男性を不適切な表現で呼ぶなどし、人格を傷つけ、ホームレスの人々への偏見を助長する恐れもあると抗議が相次いだ。
影山教授は「メディア各社は、改めて時代の流れを読み解き、市井の人たちに寄り添い、アンテナを高く張る重要性に向き合ってほしい」と強調する。
今回、読売テレビは、同コーナーの当面の休止を決定し、番組内で謝罪。弁護士や社内メンバーによる検討チームを発足させた。現在、関係者らへの聞き取りなどを実施している。
また、企画コーナーのVTRのチェックについても、チーフプロデューサー以上の管理職が立ち会うことにしたほか、研修会の充実などを決めた。同社総合広報担当者は、「放送に至った経緯を明らかにし、再発防止に向けて具体的な対策に取り組み、社員一人一人の意識向上をはかる」としている。
一方で、「『LGBTに触れるのはリスク』という結論にはならないでほしい」と性同一性障害の当事者で、LGBTの啓発活動をする山崎あおいさん(48)は訴える。もともとはメディアが取り上げたことでLGBTへの社会認識が高まったという事実もあるからだ。
「メディアの報道によって、以前よりも生きやすくなった。情報を発信したい当事者もいる。この問題を反省材料にして、今後も積極的に取材してほしい」
大阪府の話題
これを機に人をおもちゃにするカンジがなくなればいいけど・・・
線引きが難しい。バラエティの表現の自由を縛ることにもつながるしなぁ( ;∀;)