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【小説】女装ホームレスのアリシアが、再開発で消え去った町、コモリを言葉で蘇らせる

女装ホームレスのアリシアが、再開発で消え去った町、コモリを言葉で蘇らせる
女装ホームレスのアリシアが、再開発で消え去った町、コモリを言葉で蘇らせる。そこに立ち現れるのは、いないことにされてきた人々の世界だ。
子供時代、朝鮮戦争で北から逃れてきた父親は孤児になり、この町で下男として雇われると、見下されながらもなんとか金を掴(つか)もうとする。成人してようやく家を手に入れ、立ち退きのための莫大な補償金をせしめても、家族の心は通いはしない。
勉強する機会も得られないまま親に殴られて育った母親は、アリシアと弟を激しくせっかんすることでしか、自分の感情を表現できない。耐えかねた兄弟が行政に助けを求めても、家族の和が大事だと言われて追い返されるだけだ。
近代化する社会の中で、戦争の記憶や家庭内の暴力は不都合なものとして隠されてしまう。だがそれは、見えない臭いとして人々につきまとう。殺された共産主義者の埋まっている地下には下水処理場がある。「匂いは透明な霧のように突然コモリに漂いはじめ、人の粘膜にくっつく」
同様に、アリシアと弟の直面した悲劇の記憶も回帰する。兄を探して家を出た弟は、下水処理場から流れ出した大量の汚泥に埋もれて死ぬ。母親への怒りを体に刻みつけるように女物の服を身にまとったアリシアは彷徨(さまよ)いながら、消滅した町について語り続ける。
1976年生まれのファン・ジョンウンは、数々の文学賞を受賞した、現代韓国文学を代表する一人だ。時に幻想的になる彼女の作品は、近代化に伴う忘却の暴力に向き合いながら、それに対抗する力を見据えている。
たとえば生き抜くために、アリシアと弟は空想の生き物「ネ球」の話を共同で作る。こうした遊びの間だけ、二人は柔らかな魂の深みを受け入れ合う。時たま挟み込まれるこんな親密な挿話に、僕は現代においてもいまだ文学が存在することの意義を感じた。
【書き手】
都甲 幸治
翻訳家。著書に『今を生きる人のための世界文学案内』(立東舎)、『狂喜の読み屋』(共和国)、訳書にフィッツジェラルド『ベンジャミン・バトン数奇な人生』(イースト・プレス)、チャールズ・ブコウスキー『勝手に生きろ!』(河出書房新社)、ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(新潮社)など。

クリハラチアキ






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