死をも考えた体と心の性の不一致 性同一性障害者が語る苦悩 高額の性別適合手術に悩みも
体と心の性が一致しない性同一性障害(GID)当事者が、性別適合手術(SRS)の経験を語る交流会が13日、沖縄県立中部病院で開かれた。自らの体への違和(嫌悪)感や社会の無理解による孤立感の一方で、手術は高額で元の体に戻れないため、はざまで苦悩する当事者や家族は多い。多面的な情報を得て手術するか決めてほしいと、GID診療部門のある中部病院の協賛で当事者団体GID沖縄が主催し、約100人が耳を傾けた。
拡大する女性の体に生まれ、44歳で乳房切除や陰茎形成手術をした当事者(55)は、小学生の頃から膨らむ胸や初潮に「絶望した」と明かした。中学生になると無口で内向的になり「早く死んで男の体に生まれ変わりたい」と悩んだ。やせると「少年のように胸が平たくなる」のがうれしくて20歳で摂食障害に、そしてひきこもりがちになった。40代になりネットで自分がGIDと気付いたが、当時70代の母に「産んだのが間違いだ」「一緒に死ぬ」と迫られた。
中部病院で受けた手術は乳房切除など7回で、うち陰茎形成は尿道延長(約50万円、休職2週間)、永久脱毛した左前腕皮膚による陰茎形成(約180万円、休職6カ月)の計2回。合併症の懸念に手術を悩んだが「高齢になった時、風呂やおむつ交換の介護時に男として扱ってほしいし男で死にたい」と決意した。
生活費を確保し、術後の痛みやリハビリに1年半耐えた。今も左腕は少し動かしづらいが「元は女性と意識されなくなり自信が付いた」と話した。
母や職場の上司は「私の生きる姿を見るうち理解ある協力者になった」といい、当事者に向けて「情報を集めよく考え、後悔のない選択を」と呼び掛けた。また、周囲の人たちに向けて「打ち明けた当初は変態かのように扱われつらかった。臭いもののようにシャットアウトせず、偏見による当事者のつらさに目を向ける社会になってほしい」と願った。
約120万円で乳房切除や子宮・卵巣摘出手術をし、男性として生活する30代の当事者も「なぜ自分の体がこんなに嫌なのか分からず、性別で分けられることに苦痛が増した。ほかの人への伝え方も分からなかった」と苦しさを語った。
自殺未遂後に自身がGIDと知り「診断名が付くものなのかと気持ちが楽になった」。手術後に戸籍も男に変更し「生きていて良かったと心から思った」という。当事者へ「SRSは自分らしく生きる選択肢の一つ。生きる道、ベストな道も一人一人違う。生き抜いて」と訴えた。
かといって実際にSRSした人の半数は後悔しているというデータもある。。。